憲法と東アジア情勢
林田力
変えるな9条!葛飾憲法集会実行委員会は2014年8月11日、変えるな9条!葛飾憲法集会の連続学習会・第3回を東京都葛飾区のウィメンズパルで開催した。浅井基文氏(元外交官、元広島大学平和研究所所長)が「憲法と東アジア情勢」と題して講演した。憲法と東アジア情勢はコインの裏表の関係にある。最近は北朝鮮脅威論を言わなくなった。アベノミクスが賞味期限切れになり、安倍政権は拉致問題で支持率維持を狙っている。そのために北朝鮮脅威論を言わなくなった。結局のところ、北朝鮮脅威論は作り物に過ぎない。
これに対して、中国脅威論は多くの国民の頭に忍び込んでいる。日本人の物事の考え方は中国を含めた国際スタンダードとかけ離れている。アメリカ善玉・中国悪玉論は誤りである。
日本の戦後はポツダム宣言を誠実に履行すると受諾したことから始まる。その具体化は日本国憲法である。ところが、護憲派の憲法学者もポツダム宣言までは遡らない。ポツダム宣言が憲法の根っこにある。ポツダム宣言を根拠にしたら集団的自衛権など出てこない。
マッカーサーノート第二原則では自己の安全を保持するための手段としての戦争も放棄すると定めた。自衛権も否定している。これは1946年の吉田首相答弁も同じである。それをねじ曲げた国がアメリカである。アメリカはルールを守らない国である。戦争を違法化する動きにアメリカは逆行している。集団的自衛権は昔の軍事同盟の焼き直しである。
オバマ政権はカラー革命を演出し、NATOの東方拡大をしてロシアを丸裸にしようとしている。アラブの春も今は春なんてどこにもない。イラクとシリアのイスラム国も元はアサド政権打倒のためにアメリカらが支援したものである。今はイスラム国に対してなす術がない。もし安倍政権が暴走したら、アメリカは中国と組んで日本に再びポツダム宣言を押し付けるだろう。
中国とロシアは新国際経済秩序形成を目指し始めた。BRICs開発銀行創立などである。アメリカ主導の政治秩序を批判している。日本はポツダム宣言に基づく日本国憲法及び平和な東アジア国際秩序を形成することを目指すべき方向として確立すべきである。それは中国とロシアの目指す方向と重なる。日中露協力路線こそ目指すべきものである。
日本の物差しよりも中国の物差しの方が国際スタンダードに近い。日本はおかしい。それがポイントである。日本には普遍的価値という物差しがない。日本の思想の致命的欠陥である。普遍的価値がなければ歴史意識も欠ける。日本人は今中心主義である。御祓が済んだらチャラという世界である。過去を知らない者は過去を繰り返す。日本人の特異性がある。日本人はおかしい。日本は客観的な認識がないため、公は、お上である。
日本人にはパブリックという意識がない。赤信号皆で渡れば怖くない。何かあれば買い占めが起きる。お上の目の及ばないところでは勝手な行動に走る。中国の公は欧米のパブリックに似ている。皇帝も天の道に外れたら打倒していい。中国の人権感覚は他者を考えている。天安門事件や少数民族弾圧に対して、天下の公から肯定する考え方がある。それを支持すべきと主張するつもりはないが、それは欧米のパブリックに近い。内側から理解することに努力することで、より正確な認識を得られ、真っ当な関係を築くことができる。
質疑応答
林田力「中国やロシアとの協力関係を目指すべきとの話であったが、クリミア編入や東部地域の親露派支援などロシアがウクライナでして行っていることは拡張主義的である。アメリカを支持するつもりはないが、ウクライナ問題を踏まえてロシアを評価できるか」回答「クリミア半島は歴史的にロシア領であった。プーチンはアメリカがコソボ独立でしたことと同じことをしたと主張している。国際法上の争点であり、一方的に批判できない」
質問「ロシア領からウクライナに攻撃している。ロシアはやり過ぎではないか」
回答「報道に偏りがある。確認されていないことに基づいて判断できない」
質問「中国は汚染食品などの問題がある。私が付き合った中国人は身勝手であった」
回答「つぎはぎで見るならば日本人も真っ黒である。他者感覚が働くかである。私が付き合った中国人は極めて良質であった。中国人は相手を見る。日中関係が経済中心で来たことが問題ではないか」
質問「日中露の協力関係は理想と考える。しかし、中国は西欧的価値観に流されているのではないか」
回答「確かにケ小平時代は流されていたが、中国は自信を取り戻しつつある。私は、中国は手強いと考える」
質問「韓国に触れないのは何故か」
回答「特に意図している訳ではないが、中国への認識をただせれば韓国との関係も改善できると考えている」
質問「日本人論に違和感がある。日本人の権力者には、そのようなタイプがいるかもしれないが、この集会の参加者には当てはまらないのではないか。中国とロシアもアメリカと同じと考えている。中国やロシアも自己の国益で行動している」
回答「日本人論が参加者には該当しないという指摘が当たっていることを願っている。しかし、中国脅威論が浸透している現状に日本の思想のおかしさがある」
質問「東アジア情勢というタイトルであったため、もっと具体的な外交問題を期待していた。尖閣諸島の問題について見解を聞かせてください」
回答「尖閣諸島に対する中国の主張に無理はない。ポツダム宣言は『日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国ならびに吾等の決定する諸小島に限られなければならない』と定めている。そのポツダム宣言を日本は受諾した」
レビュー
以下では「憲法と東アジア情勢」の感想を述べる。最初に配布資料について、集会では言及されなかったが、興味深い記述があった。「日本人全体としての反核感情は、広島及び長崎の原爆体験を国民的な負の遺産として共有する営みに根ざすものではなく、第五福竜丸の被爆及びマグロの放射能汚染に対するパニックに基づくものであるだけに、様々な弱点を抱えています」。この指摘は放射脳カルトに基づく脱原発の弱さに重なる(林田力『放射脳カルトと貧困ビジネス』アマゾンKindle)。続いて内容の感想である。ポツダム宣言重視の憲法論、日中露協力関係、日本人論の三点について述べる。最初にポツダム宣言重視の憲法論であるが、これは大いに賛同する。
日本国憲法に対する強固な攻撃は押し付け憲法論である。これに対して護憲派は日本国憲法の内容が当時の日本人の希望に合致していたと反論する傾向がある。これは憲法の内容が国民に支持される妥当な内容であるとの論拠としては有益である。しかし、当時の日本に日本国憲法の内容に反対だった人がいたことも事実である。日本国憲法制定に連合国軍総司令部の強権があったことも事実である。この点で押し付け憲法論を否定できない。
むしろ押し付けられて当然と考えるべきである。日本は軍国主義の除去を求めるポツダム宣言を受諾した。大日本帝国憲法のままでは日本が平和的な民主国家になることはない。従って新憲法の制定は必然である。押し付けに不満があるならば連合国(国際連合)と再度戦争して勝たなければならない。それが保守派の大好きな現実政治というものである。
次の米国悪玉・中露善玉論に基づいた日中露協力関係は、あまり賛成できない。会場で質問したようにウクライナでロシアがしていることは拡張主義にしか見えない。クリミアをウクライナ領にしたのがフルシチョフの思い付きで根拠のないものとしても、それ以前にクリミアがロシア領であったこと自体がロシアの長年の拡張主義の結果である。
米国批判については賛同できる面が多い。現在の日本外交が米国従属一辺倒で属国化の道を進んでいる以上、米国離れが望ましい方向性になる。だからと言って日米同盟を抜けて中露ブロックに入るならば冷戦思考そのものである。米国善玉・中露悪玉の冷戦思考に振り回されたくないが、その逆にも振り回されたくない。日本は米中露等距離外交を目指すべきだろう。
この日中露協力関係に対して集会参加者の反応は必ずしも好意的なもので満たされた訳ではなかった。実は中露善玉論はインターネット上では珍しいものではない。むしろネット左翼の共通認識と言ってよい。ウクライナ問題でもロシアに都合の悪い報道は全て欧米メディアのプロパガンダとする陰謀論が幅を利かせている。この集会の雰囲気からネット世論は現実の世論とまだまだギャップがあることを再確認した。
最後の日本人論は賛同できる。日本人は進んだ西欧、いち早く近代化した日本、遅れた中国という視点から西欧と中国を対極に見る傾向がある。しかし、実際は西欧と中国の価値観は似ており、日本の特異性が顕著である。
但し、中国と西欧の共通点は公共心よりも個人主義になると考える。個人主義と真の意味の公共心は裏表の関係であり、浅井氏の指摘を否定しないが、個人主義の脆弱な日本人に公共心を説くことは、そのような意味での公共ではないとしても、お上への従属を進めることになると危惧する。
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